あかくなれ


アキラがフラれた。
というのはよくある事で、今年に入ってから何度目だろうかと思って数えようとしたが、アキラ本人の目の前でやろうとしたら泣きそうな目で見られたのでやめておいた。 フラれたアキラがやることは、十中八九「飲み会」だ。
しかしこれが余りにも参加したがる人間が居ない所為で、大抵は俺の家にアキラが酒を持って上がりこんでひたすら飲みまくると言う結果になる。
本当に、迷惑だ。
けれどこういう時のアキラは強引で、いくら嫌だと言っても無理やり上がりこんでくる。不法侵入だと言ってやりたいが、付き合いが長いアキラは俺の家族達に暖かく迎え入れられてしまうので、俺が拒否しても無駄だ。
時々、家に帰ったら勝手に上がりこんでいる時だっであるのだから。
そんなわけで、今日もアキラは缶チューハイと適当なお菓子を持って俺の部屋へとなんの断りも無く乗り込んできた。いい気分で転寝していたので、正直ちょっとムカついたのだけど、こういう状態のアキラは俺が怒ってもまったくきかないのであきらめている。
「あーぁ、なんでうまくいかねぇのかな…」
「さぁね」
アキラはバカだけれど、悪い奴ではない。まぁ、たまにそのテンションがウザくなるときもあるけど、女の子だったら俺なんかよりアキラみたいなタイプのほうが一緒にいてて楽しいんじゃないかと思う。
「なぁ、深司ぃ。俺のどこがだめなんだと思う?」
だから、そう問われてもわからないのだ。酔っ払いの戯言だと思って「さぁね」と返事したら、ちゃんと答えろと怒られた。
どうして俺が怒られなければいけないのかわからなくて、ため息を吐きそうになったが、そうするとアキラの泣き上戸が発症しそうなのでなんとか堪えた。
俺がこれだけ口に出してぼやかずに我慢していることを、誰か褒めてくれてもいいと思う。 さて、アキラのだめなところ。
「…酒癖が悪い」
「これは今だけ!普段は普通だろ!?」
じゃあ今は普通じゃないと言う自覚はあるのだなぁと感心した。前後不覚になるほどまで呑まれても困る。 それ以外でアキラのだめなところ。俺は真剣に考えてみる。
「…アキラのだめな所なんて、考え付かない」
慰めでも適当に言ったわけでもなくて、それは本心だった。アキラは悪い奴ではないのだ。俺なんかと中学も高校も卒業したって縁を切らずにいてくれるし、努力家だし、場の雰囲気を盛り上げるし、他人を思いやれるし…と考えたらきりがない上になんで俺がここまでアキラを褒めてやらなきゃいけないんだ。
そう思っていると、ふいにアキラがじっとこちらを見ているのに気付いた。 バカみたいな顔をしている。酒の所為で真っ赤にもなっている。
「…なに」
「深司って、俺のこと、すっげー好きなんだな」
感心したように呟く、その言葉に無性に腹が立ったので、「そういう無神経なところがだめなんじゃない」と言ってやれば、案の定アキラは泣き出してしまった。
泣きたいのはこっちだ。